アリビナ宇宙科学研究所

紫金山・アトラス彗星の観測報告

2023年1月に発見され2024年10月13日に地球に最接近すると予想されていた「紫金山・アトラス彗星」(C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)) の観測がアリビナ宇宙科学研究所でも行われました。

紫金山・アトラス彗星について

紫金山・アトラス彗星は2023年の発見から、2024年の大彗星になると予想がされていた彗星です。そのため、当研究所でも観測イベントを実施することを決定していました。しかし今年7月の時点で、太陽最接近に伴って彗星が崩壊する可能性が各天文台より指摘されていました。このため、この大彗星の観測は絶望的であると一時は思われました。しかしこの彗星は崩壊することなく近日点を通過し、その後10月9日に明るさのピークに達しました。このときの等級は最大で-4等級となり、名実ともに「2024年の大彗星」となりました。このためアリビナ宇宙科学研究所は、この大彗星の観測会を予定通り開催することを決定しました。この決定以前より当研究所の彗星観測部門の職員によって観測が続けられていました。

10月13日の観測会

アリビナ宇宙科学研究所は、この大彗星の観測会を東京都青梅市今井にて開催しました。この観測会自体は、2024年初めより実施する方向で動いていたものでありますが、彗星が「無事に」回帰したことによって、実際に行われることになりました。

この日は天候に恵まれ、また肉眼で観測可能な等級に達していたことから、観測は無事に成功するだろう、と考えられていました。参加者は当研究所の天文学・宇宙物理学の職員5名であり、赤道儀や天体望遠鏡、また高性能なカメラなど、さまざまな機材が用意され、観測の準備が17時頃より開始されました。この日の紫金山・アトラス彗星は、西の空の金星とほぼ同じ高度に見えるという予想でしたので、日没後の40分から1時間ほどが勝負と考えられ、日没前から準備が行われました。

結果として、この日の観測会では、日没後より西の空に雲が掛かり始めてしまい、彗星を観測することは叶いませんでした。

その後の観測と成功

観測会の後にも各職員はこの大彗星を観測しようと、日没後に彗星の観測に挑みました。結果として多くの職員が天候や街の灯りによって肉眼での観測、また望遠鏡を使った観測にも失敗しました。しかし当研究所の彗星観測組の職員である高橋乃々香氏は、山梨県の富士五湖の湖畔まで車で機材を運び、紫金山・アトラス彗星の観測を10月14日に実施しました。

その結果、なんと近日点通過後の紫金山・アトラス彗星の観測は見事に成功しました。

Tsuchinshan-ATLAS (2024.10.14)

この高橋氏の撮影した写真では、上方に綺麗に尾が伸びていることが確認できます。高橋氏はこの観測について、「この彗星は、画角に入りきらない程尾が長く、望遠鏡を用いて観測することは難しかった。」と語っています。

またこの後にも、各地から観測が試みられました。当研究所役員の能美葉月氏は、長野県にて紫金山・アトラス彗星の観測を10月20日に実施しました。その結果も見事に成功となりました。

Tsuchinshan-ATLAS (2024.10.20)

この能美葉月氏の撮影した写真では、より鮮明に長い尾が確認できます。また高橋氏の撮影した写真 (10.14) と見比べて、彗星の尾の伸びている角度の違いから、彗星が遠ざかっている (位置が変わっている) ことも確認できます。能美葉月氏はこの観測について、「東京には使える天文台もあるが、20日は関東は夕方から曇りの予報が出ていたため、車を出して長野まで行くことにした。観測結果は満足のいくものとなった。」と語りました。

一方、当研究所が各職員の努力により、研究所全体としては成功といえる結果を残す中、観測が難しかった職員からは落胆の声も出ています。この大彗星を昨年より楽しみにし、観測会まで実施した当研究所の所長田上彩夏氏は、悔しくも天候に恵まれず、一度も観測が成功していません。今後の天体ショーでは当研究所は組織として、各職員が納得できる観測を行えるように、組織的な大規模な観測会を一度ではなく数回にわたり実施するなどして、観測環境による職員ごとの差を極力減らすことを目指し、研究所としての活動・イベントを組んでいく方針です。